ロゴは、企業やブランドの「顔」となるものです。
顧客や取引先に対して視覚的な第一印象を与え、ブランドの認知や信頼を形成する重要な役割を果たします。
特に、新規事業や店舗のオープン時には、ロゴを通じてその場の雰囲気やブランドのこだわりを視覚的に表現することが欠かせません。
目次
【実例紹介】新規オープンするBarのロゴ制作事例
今回ご紹介するのは、「ASHIKAGA MALT CLUB」というBarを新規オープンされる際に、店舗ロゴや名刺・ショップカード、ブランディングサイトの制作をご依頼いただいた事例です。
ご依頼の背景
依頼者であるオーナー様は、「自分が楽しみたいお酒が置いてあるBarを作りたい」という強い想いから、今回のオープンを決意されました。
お酒に対するこだわりが非常に強く、店舗自体もそのこだわりを反映した空間にしたいというビジョンをお持ちでした。
しかし、ロゴやブランディング全体の方向性については明確なイメージを持たれておらず、最初のご要望は「エンブレムのようなもの」という漠然としたものでした。
また、業界特性やターゲット層についても具体的な認識はお持ちでなかったため、要件定義の段階で深堀りを行い、プロジェクトの土台を一緒に構築しました。
制作の前に整理しておきたいポイント
ロゴ制作をスムーズに進めるためには、事前に考えておくとよいポイントがあります。
以下は、今回の事例の中でも重要になったポイントです。
- 店舗やブランドの強みや特徴
「お酒にこだわる」「落ち着いた雰囲気」など、目指す空間やブランドの特性を整理します。 - ターゲット層
店舗やサービスを利用するお客様の年代、性別、嗜好を把握しておくと、方向性が定めやすくなります。 - ブランドイメージ
シンプル、エレガント、親しみやすい、などのイメージに近いキーワードをピックアップします。 - 使用する場面
ロゴが使われる媒体(例: 看板、名刺、Webサイト)によってデザインの制約や特徴が変わることがあります。 - 参考デザインの収集
必須ではありませんが、イメージに近いロゴやデザイン例があると、要件定義の際に具体的なすり合わせがしやすくなります。
要件定義の重要性とプロセス
要件定義がロゴ制作に与える影響
ロゴのクオリティは、初期段階でどれだけ明確な方向性を定められるかにかかっています。
そのためには、クライアントの想いをしっかりとヒアリングし、プロジェクト全体の基盤を築く「要件定義」が欠かせません。
要件定義が不十分な場合、依頼者とデザイナーの間でイメージのズレが生じ、手戻りや時間のロスにつながる可能性があります。
一方で、しっかりとした要件定義を行うことで、クライアントのビジョンを具現化し、満足度の高いデザインを生み出すことができます。
実例で見る要件定義のプロセス
1. 初期ヒアリングで情報を収集
依頼時、オーナー様のご要望は「エンブレムのようなロゴ」というざっくりとしたイメージでした。
具体的なデザインやターゲット像はまだ固まっておらず、制作の前提条件を明確にする必要がありました。
そこで、初回の打ち合わせでは以下の質問を中心にヒアリングを行いました。
- 店舗のコンセプトは何か?
→「自分が飲みたいと思うこだわりのお酒を提供する、落ち着いた隠れ家的な空間。」 - どんな雰囲気をロゴで伝えたいか?
→「シックで上品。」 - 想定するターゲット層は?
→「お酒をじっくり楽しみたい大人層、30~50代の男女。」
2. リサーチとイメージ共有
「エンブレム」といっても、具体的な形やスタイルには幅がありました。
そこで、以下の取り組みを行い、方向性を具体化しました。
-
参考デザインの収集(実際に収集した参考の一部:https://jp.pinterest.com/tazunokidtm/amclogo/)
- 海外の高級Barやクラシックなエンブレムデザインのロゴを複数ピックアップ。
- フォントやカラーリングのバリエーションも含めて提案し、好みを確認。
-
競合店舗の調査
- 地域内および全国の隠れ家Barを調査し、競合のロゴデザインの傾向を把握。
-
キーワードを明確化
- 「洗練」「クラシック」「信頼感」というキーワードを軸に、ロゴのコンセプトを具体化。
- 「洗練」「クラシック」「信頼感」というキーワードを軸に、ロゴのコンセプトを具体化。
3. プロジェクト全体の方向性を確定
要件定義の結果、以下のような方向性が固まりました。
- ロゴのスタイル:
円形、左右対称で洗練された印象。レリーフを使用しクラシックさを。 - フォント:
筆記体とセリフ体の組み合わせを検討。 - カラー:
ダークネイビーとゴールドを基調とし、落ち着きと高級感を演出。 - 使用場面:
看板、名刺、ショップカード、Webサイトなど多用途対応。
この要件定義を基に、次のステップであるロゴデザインの初稿制作へと進みました。
ロゴ制作フロー:初稿から最終案まで
ロゴデザインの全体像
ロゴ制作は、ただデザインを作るだけではなく、依頼者とデザイナーが何度も意見を交わしながら進化していくプロセスです。
ここでは、ASHIKAGA MALT CLUB様のロゴ制作を例に、以下のステップでどのように完成形へと到達したのかをご紹介します。
1. 初期デザイン案の提案
コンセプトに基づいた初稿の制作
要件定義で整理した「洗練」「クラシック」「信頼感」を反映し、以下の4つのレリーフデザイン、2つのフォント案を制作しました。
特にレリーフは、ウィスキーの原料となる植物をモチーフにしたり、シンメトリーなデザインで統一し洗練さをだすなど、パターンを探りながら初稿を制作しました。
オーナー様の反応
オーナー様からは、「一番右のレリーフがクラシックで洗練さを感じる。フォントデザインは横並びで別の案が見たい。」とのフィードバックをいただきました。
2. フィードバックをもとにした修正案
修正案のポイント
フィードバックを受けて、以下の修正を行いました。
- 一番右のレリーフをベースにやわらかいパターンを作成
- 多様なフォントデザイン、レイアウトパターンの検討
オーナー様との再確認
修正案を共有した際には、「上段右から二番目と三番目のデザインがイメージに合っている。」とのコメントをいただきました。
一方で、「フォントデザインがもっとレリーフに溶け込めないか…」という追加のご要望がありました。
3. 最終案の確定
仕上げと最終チェック
さらに細かな調整を加え、最終案として以下の要素を確定しました。
- レリーフデザイン: 最終候補2案をミックスし、洗練さとクラシックさを強調できるように再構成。
- フォント: 筆記体とゴシック体を部分的に織り交ぜ、レリーフを邪魔せずフォント単体でもブランドイメージを表現できるようにデザイン。
- カラー: モノクロとネイビー×ゴールドで、どの媒体でも使いやすくパターンを作成。
オーナー様の評価
完成したロゴをご覧いただいた際、「すごく気に入っている。早速名刺に反映してほしい!」と、高く評価いただきました。
4. ロゴ完成後のステップ:名刺・ショップカードへの展開
完成したロゴは、店舗の名刺やショップカードのデザインにも展開中。
今後のステップは、メニュー表や店舗サイン、Webサイトの制作を進めています。
まとめ:ロゴ制作成功の鍵は「要件定義」
ロゴは、企業やブランドを象徴する重要なデザインです。
しかし、ただ見栄えの良いデザインを追求するだけでは、真に価値あるロゴにはなりません。
ロゴ制作を成功させるためには、プロジェクトの土台となる「要件定義」が欠かせません。
要件定義がもたらす3つのメリット
-
イメージのズレを防ぐ
依頼者とデザイナーが同じゴールを共有することで、制作途中でのイメージのズレを防ぎ、無駄な手戻りを減らせます。 -
効果的なデザインを生む
依頼者が気づいていない事業の強みやターゲット層を明確化することで、ブランディングに直結するロゴデザインが生まれます。 -
満足度の高い成果物を実現
細部まで練られた要件定義を基に制作することで、依頼者の期待を上回る成果物を提供できます。
実例から学ぶ要件定義の重要性
今回の隠れ家的Barのロゴ制作では、当初のご要望は「エンブレムのようなロゴ」という漠然としたものでした。
しかし、要件定義の段階で以下を深堀りすることで、ロゴの方向性を具体化しました。
- 店舗のコンセプトや強み
- ターゲット層や競合との違い
- デザインのキーワード(例: 洗練、クラシック、信頼感)
この取り組みを通じて、最終的にはオーナー様の想いを反映しつつ、店舗のブランド価値を高めるロゴを完成させることができました。
ロゴ制作を検討する皆様へ
「ロゴを作りたいけれど、何を伝えればいいのかわからない」「要件定義って難しそう」という不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
デザイントランスメディアでは、要件定義の段階でしっかりとヒアリングを行い、依頼者の想いを丁寧に形にするプロセスを重視しています。
ロゴ制作を成功させる鍵は、事業やブランドの強みを一緒に見つけることだと考えています。